トナーカートリッジを扱う企業や学校などでは、「SDS(安全データシート)」の提出を求められることがあります。
SDSとは、製品に含まれる化学物質の情報や、安全な取り扱い方法をまとめた重要な資料です。
トナーにも化学成分が含まれているため、各メーカーが公式にSDSを公開しており、作業者の安全確保や環境保全のために欠かせないものとなっています。
本記事では、「トナーのSDSとは何か」から「どんな内容が書かれているのか」「どこで入手できるのか」までを、メーカー公式情報をもとにわかりやすく解説します。
純正トナーの安全性や環境配慮を理解する上でも役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
SDS(安全データシート)とは?
SDSの正式名称と目的

SDS(Safety Data Sheet、安全データシート)は、製品に含まれる化学物質の性質・危険有害性・応急措置・保管方法などを記載し、安全な取り扱いのための情報を事業者間で伝達する文書です。日本ではGHSに基づく情報伝達方法を示す JIS Z 7253(ラベル表示・作業場内表示・SDS)に準拠して作成されます。
メーカー各社もSDSを「化学物質を安全に扱うための情報をまとめた文書」として位置づけ、トナー等のサプライ製品についてオンラインで提供しています。
労働安全衛生法や化学物質規制との関係
日本では、労働安全衛生法 第57条・第57条の2により、危険有害性のある化学物質を譲渡・提供する者は、容器や包装への名称等の表示と、文書(SDS)の交付等による通知が求められます。関連する制度改正は近年も進んでおり、事業者は最新の要件を確認して対応します。
トナーにSDSが必要な理由

トナーは粉末状の化学製品(混合物)であり、事業者間で流通・使用されるサプライです。したがって、トナーのSDSには、構成成分や危険有害性の有無、取り扱い・保管・応急措置等が整理され、作業者の安全確保や法令順守のための基礎資料として機能します(メーカー提供のトナーSDSでも同趣旨が明確化されています)。
また厚生労働省の化学物質対策に関するQ&Aでも示されています。
トナーSDSに記載されている主な内容
成分情報(化学的特性・分類)
トナーのSDSでは、まず製品の化学的性質や構成成分が示されています。
主な記載項目は以下のとおりです。
- 化学品の名称
- 一般名称(例:静電複写用トナー)
- 主成分(ポリエステル樹脂、カーボンブラック、ワックスなど)
- 含有率(%)や化学式
- 化学品分類(GHS分類:可燃性固体、有害性分類など)
各メーカーのSDSでは、これらの成分がGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に基づいて分類されており、危険性・有害性の程度を視覚的に示す絵表示や注意喚起語(例:「注意」)が付されています。
トナーの多くは「可燃性固体」として扱われることが多く、粉じん爆発防止などの注意事項が明記されています。
取り扱い・保管方法
SDSの中心項目の一つが「取り扱い上の注意」と「保管上の注意」です。
主に以下のような内容が記載されています。
- トナー粉末の吸入を避ける
- 飲食や喫煙をしながらの作業を行わない
- 静電気や火気を避ける
- 密閉容器で保管し、高温多湿を避ける
- 子どもの手の届かない場所で保管
特にレーザープリンター用トナーは微粉末状であるため、強い風や振動によって飛散することがあり、吸入防止と換気の確保が重要とされています。
また、SDSでは「直射日光や高温を避け、冷暗所で保管」といった具体的な条件が示されることもあります。
応急措置・火災時の対応
トナーは通常状態では安定した製品ですが、誤って吸い込んだり目に入ったりした場合の応急措置も明確に記載されています。
- 吸入した場合:新鮮な空気の場所に移動し、症状があれば医師の診断を受ける
- 皮膚に付着した場合:石けんと水で洗い流す
- 目に入った場合:速やかに流水で十分に洗い流し、異常があれば受診
- 飲み込んだ場合:無理に吐かず、速やかに医師に相談
火災時は、粉末消火剤・二酸化炭素(CO₂)・泡消火剤などが推奨されます。
一方で、水を大量にかけるとトナーが固まり、機器や床を汚染するおそれがあるため、状況に応じた適切な消火方法が記載されています。
環境への影響や廃棄方法
SDSでは、環境保全の観点からの注意事項も重要な項目です。
- トナーを排水や土壌に直接流さない
- 廃棄は産業廃棄物として、自治体の法令に従い適正に処理
- 容器や包装材の再利用・リサイクルに関する注意
多くのメーカーは「環境への直接的な影響は小さい」と明記しつつも、適正な処理・リサイクルの実施を強く推奨しています。
特に純正トナーの場合はメーカーが回収・リサイクルプログラムを設けているため、SDSとあわせて公式の回収制度を確認することが望ましいです。
注意すべきポイント
トナーSDSを確認する際に、特に注目すべきポイントは以下のとおりです。
- 吸入防止:マスクや換気設備の利用を推奨
- 静電気対策:トナーは帯電性があるため、火気やスパーク源を避ける
- 保管温度:40℃以下を推奨するメーカーが多い
- 飛散防止:こぼした際は掃除機(静電防止型)で回収し、乾いた布では拭かない
これらの注意事項は、作業者の安全確保と製品品質の維持の両方に関わる重要な要素です。
メーカーごとに表現は異なりますが、内容の基本構成はJIS Z 7253に準じており、どのSDSにも共通しています。
メーカー別トナーSDSの確認・入手方法
トナーに関するSDS(安全データシート)は、各メーカーが公式サイト上で公開しています。
SDSは無料で閲覧・ダウンロードでき、製品名や型番を入力することで必要な資料を確認できます。
以下に、主要メーカーの公式ページを一覧で紹介します。
Canon(キヤノン)
- 🔗 安全データシート(SDS) | キヤノン株式会社
キヤノンでは、トナー・インク・感光体などのSDSをオンラインで提供しています。
キーワード検索、または製品カテゴリーを選択し、型番または商品名を入力することでPDFを入手可能です。
RICOH(リコー)
- 🔗 SDS(サプライ製品) | リコー
リコーのSDSページでは、トナーや感光体、メンテナンスキットなどを商品群/商品モデル名別に検索できます。
RICOHブランドの複合機やプリンター全般に対応しており、PDF形式で提供されています。
FUJIFILM(富士フイルムビジネスイノベーション)
- 🔗 SDS(安全データシート)検索 | 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
FUJIFILMでは、トナー・定着剤・廃トナー容器など、プリンター関連資材のSDSを一覧形式で公開しています。
フリーワード検索、または商品シリーズを選択することで、該当するSDS(PDF)をダウンロード可能です。
KONICA MINOLTA(コニカミノルタ)
- 🔗 複写機/複合機サプライ製品 MSDS(SDS)一覧表 | コニカミノルタ
コニカミノルタのSDSページでは、トナーやインクジェット用インクなどのSDSが一覧表で確認できます。
法人・教育機関の安全管理目的でも利用しやすい構成になっています。
SHARP(シャープ)
- 🔗 安全データシート(SDS) | シャープ株式会社
シャープの複合機やプリンター用トナー、現像剤などのSDSを提供しています。
商品名の一覧形式にて確認が可能で、PDF形式での閲覧・保存が可能です。
Brother(ブラザー)
- 🔗 安全データシート(SDS) | ブラザー販売株式会社
ブラザーでは、トナーやインクカートリッジのSDSをオンラインで公開しています。
製品カテゴリを選んでから型番で検索する方式で、個人・法人どちらでも閲覧可能です。
EPSON(エプソン)
- 🔗 安全データシート(SDS) | エプソン
エプソンでは、トナー・インク・定着ユニットなどのSDSをカテゴリ別に提供しています。
検索フォームから製品名を入力すると、該当するPDFデータをダウンロードできます。
NEC
- 🔗 SDS(安全データシート)の提供について | 日本電気株式会社(NEC)
NECでは、プリンター用トナーや感光体などのSDSを製品ごとに公開しています。
シリーズや型番の一覧が掲載されており、それぞれPDFへのリンクされております。
OKI(沖データ)
- 🔗 安全データシート | OKIデータ株式会社
OKIのSDSページでは、プリンター・複合機用のトナーやリボンなどのSDSを公開しています。
製品カテゴリーから選択することで、簡単に該当資料を検索できます。
各社とも、SDSの掲載形式や検索方法は多少異なりますが、すべて公式サイト内で公開されています。
安全管理担当者や購買担当者が製品を選ぶ際は、メーカー公式ページから最新のSDSを確認することが推奨されます。
SDSから読み取れる「純正トナーの安心性」
純正品では安全性や環境配慮面で明確な情報を公開
各メーカーが公開しているSDS(安全データシート)を見ると、純正トナーがどのように安全性と環境配慮を重視して設計されているかがよくわかります。

SDSには、化学的な性質や成分情報に加えて、以下のような項目が詳細に記載されています。
- 作業時の安全対策(吸入防止・換気の確保など)
- 火気の取り扱い注意や保管条件
- 廃棄時の環境負荷を抑えるための処理方法
- 人体や環境への有害性の有無
これらはすべて、製品の安全を保証するための科学的な根拠を示すものであり、メーカーが責任をもって製造・流通している証拠といえます。
また、Canon、RICOH、FUJIFILM、KONICA MINOLTA など主要メーカーでは、トナーの再資源化やリサイクルプログラムも公開しています。SDSとあわせて、各メーカーが実施しているトナー回収・リサイクル制度も確認しておくと安心です。
互換トナーやリサイクルトナーのSDSは?

一方で、互換トナーや再生(リサイクル)トナーの場合、メーカーのようにSDSを公式に公開していないケースが多く見られます。
これは、トナーの製造元や成分構成が明確でない場合があるためで、購入者が安全性や化学物質の内容を正確に確認できないことがあります。
また、リサイクルトナーでは再利用されたカートリッジに異なる粉末が充填されることもあり、一律に安全データを提示できない構造になっているケースも少なくありません。
もちろん、すべての互換品が危険というわけではありませんが、
安全情報や成分データを公開している純正トナーの方が信頼性が高いことは確かです。
企業や学校など、安全基準を重視する現場では、SDSを確認できる純正品を選ぶことで、
法令順守やリスク管理の面でも安心して使用できるという大きなメリットがあります。
SDSまとめ

SDS(安全データシート)は、トナーを安全に扱うための基本資料であり、安全・環境配慮・信頼性のすべてを理解する上で欠かせない情報源です。
製品の化学的性質や取扱い上の注意点を明確に示すことで、作業者の安全を守り、万一の事故や環境への影響を未然に防ぐ役割を果たしています。
特に純正トナーは、各メーカーがSDSを通じて安全性や環境対応の姿勢を公式に示しており、使用者が安心して製品を取り扱えるよう配慮されています。
一方で、互換トナーや再生品ではSDSが用意されていないこともあるため、安全情報を確認できる純正品を選ぶことが、結果的に最も信頼できる選択といえるでしょう。
企業や学校など、多くの人が関わる現場では、こうしたSDSの理解が安全管理の第一歩になります。
正しい情報に基づいて製品を選び、環境と人の両方にやさしい運用を行うことが、
これからの時代に求められる“責任あるプリント環境づくり”につながります。
トナーを安全に保管・管理したあとは、買取の流れもチェックしておきましょう。

SDSを公開している主要メーカーの純正トナーは、当店でも高価買取の対象です。お気軽にお問い合わせください。


